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肩甲骨ウォールスライド(前鋸筋・下部僧帽筋ダイナミック活性化)

Scapular Wall Slide

壁に背中・骨盤・後頭部・両前腕を密着させた状態で、前腕を壁に押し付けながら頭上方向へスライドさせ、肩甲骨の上方回旋+後傾+上方傾斜を能動的に作り出し、90 度以上の挙上域で前鋸筋および下部僧帽筋を高活動させるダイナミック肩甲胸郭スタビライゼーション・エクササイズ。下方回旋症候群(SDR)・巻き肩・肩峰下インピンジメントの肩甲運動学的代償を再教育する目的で用いる。

肩こり2 分3分以内やさしい立位器具:wall査読論文
肩甲骨ウォールスライド(前鋸筋・下部僧帽筋ダイナミック活性化)で主に伸びる対象部位の目安。首・肩まわりの人体模型

Muscle atlas

どこに効くか

医療診断ではなく、意識する場所をつかむための部位イメージです。主な焦点は 後頭部から首すじです。

首・後頭部後頭部から首すじ
肩・肩甲帯肩、胸、肩甲骨まわり

target muscles

  • 前鋸筋
  • 下部僧帽筋
  • 中部僧帽筋(補助)
  • 棘下筋・小円筋(外旋補助)
  • 上部僧帽筋(最小限の補助)

動作ガイド

動きの流れ

ここでは、体の向き・支点・力を抜く位置を手順に沿って確認します。

体の向き前鋸筋(脇の下〜肋骨横)下部僧帽筋(背中中央やや下)肩甲骨内縁
1手順 1
手順 1の動き

手順 1

平らな壁を背にして立ち、踵を壁から約 10〜15cm 離して立つ。骨盤を後傾気味にして腰椎の自然なカーブを保ちつつ腰と壁のすき間を最小化する(手のひら 1 枚分が目安)。後頭部・上背部・仙骨を壁に軽く接触させる。

Tips

  • 腰を反らせて腰と壁の間に大きな空洞を作らない
  • 顎を引いて後頭部を壁に軽く触れる(顎を上げない)
  • 膝は軽く緩める(ロックしない)
2手順 2
手順 2の動き

手順 2

両腕を「W」の形に作る:肘を約 90 度に屈曲し、上腕を約 90 度外転(肩の高さ)して上腕の背面と前腕の背面を壁に密着させる。手のひらは前方向、親指は天井方向。両前腕・手の甲・肘・上腕の背面すべてが壁に触れているか確認する。

Tips

  • 前腕全体(肘から手の甲まで)を壁に貼り付ける
  • 肩がすくんで耳に近づかないよう肩を下制方向にセット
  • 手首は中間位(曲げない)
3手順 3
手順 3の動き

手順 3

前腕を壁に押し付ける圧を維持したまま、息を吐きながらゆっくり両腕を頭上方向にスライドさせる。最終位置は無理のない範囲で肘がほぼ伸び切る手前まで(個人差あり:屈曲 140〜170 度)。スライド中、後頭部・上背部・仙骨・両前腕の壁との接触を一切離さないこと。

Tips

  • 腕が壁から離れた瞬間に到達範囲オーバー=そこが現時点の限界
  • 肩がすくんで耳に近づいたらすくみが入った合図=そこまでに止める
  • 肘を伸ばし切ろうとして体幹を反らせない(腰と壁のすき間を一定に保つ)
4手順 4
手順 4の動き

手順 4

頭上のトップポジションで 2〜3 秒キープ。「肩甲骨が背中の上で上向きに回転している」「脇の下の前鋸筋に力が入っている」感覚を確認する。息は止めない。

Tips

  • 肩甲骨を “つまむ” のではなく “上方回旋&前鋸筋で押し出す” 感覚
  • 肘が壁から離れたら 1〜2cm 戻して接触を回復してからホールド
5手順 5
手順 5の動き

手順 5

息を吸いながら同じ軌道でコントロールしてスタートポジションに戻る。下降中も前腕と上背部を壁から離さない。腕を「落とす」のではなく「降ろす」。

Tips

  • 重力で落とさない=離心性収縮で前鋸筋・下部僧帽筋を効かせる
  • 下降途中で肩がすくみ始めたら一度止めて姿勢をリセット
6手順 6
手順 6の動き

手順 6

10〜15 回 を 1 セットとして 2〜3 セット繰り返す。各セット間は 60〜90 秒休む。週 3 日が標準的開始量(Kim 2016 プロトコルでは 4 週間:第 1 週 3×10、第 2 週 3×15、第 3 週 3×20、第 4 週 3×25、セット間休憩 2 分)。

Tips

  • 回数を稼ぐより接触面の維持を優先(フォームが崩れたらその時点で 1 セット終了)
  • 翌日に上部僧帽筋(首と肩の間)が強くこっていたらすくみ代償が入っていたサイン=挙上範囲を下げる
7手順 7
手順 7の動き

手順 7

発展バージョン(インピンジメント既往者・四十肩リハ後期向け):両手首にミニバンドを掛けて軽くテンションを張りながら同じスライドを行う=外旋+肩甲骨内転+前鋸筋活性化を同時に強化(Rehab Hero / Brookbush 推奨)。逆にレベルダウンする場合は接触する身体パーツを「両前腕+手の甲のみ」に減らし、後頭部や仙骨は壁から離してよい(壁に「上半身全部」をつけるのが難しい人向け)。

Tips

  • バンドは弱めから(強すぎると外転代償が出る)
  • バンドあり版は最低 2 週間の標準版習得後に導入

呼吸

上昇局面で吐く・下降局面で吸う(または自然呼吸)。ホールド中は決して息を止めない(血圧上昇・代償収縮を防ぐ)。

回数 / 頻度

10〜15 回 × 2〜3 セット。週 3 日。漸増プロトコル(Kim 2016):第 1 週 3×10 → 第 2 週 3×15 → 第 3 週 3×20 → 第 4 週 3×25、セット間休憩 2 分、計 4 週間で SDR 角度・PPT・VAS 改善。

こんなときは行わない

  • 肩関節の急性外傷後・手術後 3 ヶ月未満
  • 肩峰下インピンジメント症候群の急性期で 90 度以上の挙上で鋭い痛みが出る場合(挙上範囲を 60〜80 度に制限)
  • 頚椎神経根症急性期で頭上挙上時に上肢放散痛が増悪する場合
  • 肩関節前方不安定症で外転+外旋ポジションが apprehension(脱臼恐怖)を誘発する場合
  • 胸郭出口症候群(TOS)で挙上時にしびれ・血色変化が出る場合は範囲を低めに制限
  • Painful arc(60〜120 度で鋭い痛み)が出る場合は痛みのない範囲のみで実施し、痛みを越えて挙上しない

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出典

8 references

このストレッチの内容は、以下の文献・公的情報を参照して構成されています。各リンクから一次情報を確認できます。

  1. The effects of wall slide and sling slide exercises on scapular alignment and pain in subjects with scapular downward rotation

    Kim Y-K, Cho S-H. J Phys Ther Sci. 2016;28(8):2299-2302. PMC5080198 · en · academic · 参照 2026-05-17

    査読 RCT(n=22, 4 週間 3 日/週, ウォールスライド単独介入で SDR 角度・PPT・VAS 全て有意改善)・要約引用のみ

  2. A comparison of serratus anterior muscle activation during a wall slide exercise and other traditional exercises

    Hardwick DH, Beebe JA, McDonnell MK, Lang CE. J Orthop Sports Phys Ther. 2006;36(12):903-910. PMID 17193867 · en · academic · 参照 2026-05-17

    査読 EMG 研究(n=20, ウォールスライドは 90°以上で前鋸筋を有意に活性化、p=0.001)・要約引用のみ

  3. Scapulothoracic Muscle Activity during Use of a Wall Slide Device (WSD), a Comparison with the General Wall Push up Plus

    PMC4085196 (J Phys Ther Sci 2014) · en · academic · 参照 2026-05-17

    査読 EMG 研究(n=15, WSD は上部僧帽筋 25.2% MVC・中下部前鋸筋 56〜63% MVC を達成)・要約引用のみ

  4. Effect of scapular stabilization exercises on subacromial pain (impingement) syndrome: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials

    Frontiers in Neurology. 2024;15:1357763 · en · academic · 参照 2026-05-17

    査読 SR/MA(8 RCT, n=387, VAS WMD -0.94 / SPADI WMD -10.10, ウォールスライド含む scapular stabilization exercise の効果検証)・要約引用のみ

  5. Serratus Wall Slide

    Rehab Hero(カナダ PT 監修エクササイズライブラリ) · en · clinic · 参照 2026-05-17

    PT 監修・要約引用のみ

  6. Increased Serratus Anterior Activation During Wall Slides and Scaption

    Brookbush Institute(DPT 監修レビュー) · en · clinic · 参照 2026-05-17

    DPT 監修レビュー・要約引用のみ

  7. Learn The Best Serratus Anterior Exercises

    [P]rehab Guys(DPT 監修) · en · clinic · 参照 2026-05-17

    DPT 監修一般向け解説・要約引用のみ

  8. Surface Electromyographic Analysis of Exercises for the Trapezius and Serratus Anterior Muscles

    Cools AM, Witvrouw EE, Declercq GA, Danneels LA, Cambier DC. JOSPT 2003;33(5):247-258 · en · academic · 参照 2026-05-17

    査読 EMG 研究・前鋸筋/僧帽筋筋活動比検証・要約引用のみ

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